人間は自分にとって都合のいいことだけ信じやすいものだ 第 204 号

 本書は、いわゆる「佐々メモ」に基づく

政治家閻魔帳ともいうべき本です。

 政治家でもあった佐々さんの祖父(友房)や

父(弘雄)をはじめ、幼少の頃から遭遇し、

学生時代に教えを請い、官僚になって

から職務上接触したさまざまな内外

の政治家を取り上げています。

 よくいわれる話ですが、政治家には、

「政治家」(ステーツマン)と

「政治屋」(ポリティシャン)

の二種類があります。

 権力に付随する責任を自覚し、ノーブレス・

オブリージュ(高貴なる者の義務)を心得て

いる人は「政治家」。

 権力に付随する利益や享楽を優先して追求

するのは「政治屋」と、佐々さんは

定義しています。

 語気鋭く改憲を迫ると明確な答えが返ってきた

吉田茂、一警視として国会警備を担当したが、

あの反安保デモにも屈しなかった岸信介、

香港暴動の時、「自衛艦派遣すべし」

の我が献策を受諾した佐藤栄作、

 『日本列島改造論』を我々官僚に書かせて法外

な原稿料で操った田中角栄、『日本改造計画』

の安保論は拙論の丸写しだった小沢一郎、東

大時代からの半世紀以上の論敵だが憎めな

い不破哲三、防衛施設庁長官室で解任さ

れた私を労ってくれた上田耕一郎…ほか。

 今や海外在留邦人は120万人、海外旅行者

は年間1700万人にも達するグローバル

化の時代である。

 その安全を守るには、海外各地の危険な兆候

をいち早く掴んで、危険情報の周知、渡航制

限、家族や不要不急の要員の退去、迅速な

退避勧告、さらには脱出作戦へと

つないでいく必要がある。

 人間は自分にとって都合のいいこと

だけ信じやすいものだ。

 朝鮮半島有事や中東での軍事衝突など、

「たぶん起こらないだろう」と考えが

ちだが、危機の芽に目を閉じ、耳を

ふさいではいけない。

 情報力の強化は大切だが、予算にも

人員にも限りがある。

 何十年という時間もかかる。

 であるならば、弱いうさぎのように長い耳

を持って情報を収集しなくてはならない。

 ウサギのような早い逃げ足も必要である。

 昭和が終わる頃まで、政界、官界、財界、言論

界などには「高文組」と呼ばれる人たちがいた。

 高文組とは、1948年まで実施されていた、

高級官僚になるための「高等文官試験」

の合格者のことだ。

 高文組でもとくに昭和15年から18年組

にはもうひとつ強みがあった。

 旧制大学や高等文官試験合格後に志願して、

短期現役士官(短現)として、海軍経理学

校に入って主計中尉で任官した経歴を

併せ持つ人たちが、各界いたるとこ

ろに散らばっていたのである。

 彼らは優秀な上、結束も固くて

横の連絡が非常に緊密だった。

 いわゆる将校クラブ、将校団

ともいうべき集団だった。

 そんな海軍の同志意識、仲間意識といったもの

が縦割り行政のなかで生きていたのである。

 ノーブレス・オブリージュも

彼らの人格を支配していた。

 東日本大震災の経験が教えるように、危機管理

の際は、シンプルな体制をつくるのが原則だ。

 日本版NSCでは首相、官房長官、外務大臣、

防衛大臣の4人で決める。

 決定者が少ないことは即断即決に

つながる可能性がより高い。

 危機管理において肝要なのは、まず毅然と

した姿勢をはっきりと示すことだ。

 凡百のリーダーにはそれができない。

 形だけ繕ってみても、すぐに

馬脚を現すものだ。

 アラブ世界であれば平時から宗教関係者

や族長といった人々と、人間関係を築

いておかないことには、一次情報

は手に入らない。

 見知らぬ相手に「緊急時だから情報をくれ」

と求めても、断られるのは当然である。

 ともあれ、もう追記することもあるまい。

 これが私の最後の著作となるかもしれないが、

少なくとも本書で何度も強調したノーブレス・

オブリージュの精神を持った政治家たちが、

これからの日本を背負っていくことを、

滅びゆく士族の末裔の一人として、

「老兵」として強く期待したい。

 佐々淳行『私を通りすぎた政治家たち』

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 今回も最後までお読みくださり、ありがとう

             ございました。 感謝!

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