『源氏物語』は世界屈指の名作だ 第 2,868 号

 世界中の多くの人たちが平和な世界を希求して

いるものの、戦争のない世界はいまだに実現

していない。とりわけウクライナ戦争は

終わりが見えず、戦後最大のグロー

バル・リスクになっている。

 同時代に生き、平和を愛する私たちが、国と国、

そこに生きた人と人との間に「友好」の歴史が

あったこと、そしてその「友好」が今日でも

続いていることをきちんと知っておくこと

は、大切なことであろう。

 日本人はこれまで、多くの外国人を助けてきた

し、その一方で、日本人自体も多くの外国人

に助けられてきた。本書は、そうした

日本と世界の架け橋になった人たち

のエピソードをまとめたものである。

 『源氏物語』はなぜ欧米で評価されたのか。

11年かけ英訳したイギリス人の熱意。

 『源氏物語』はいかにして、時を超え、国境

を越え読み継がれる文学作品になっていった

のか。11年の歳月をかけて『源氏物語』を

英訳し、眠れる紫式部を目覚めさせた

王子さまは、一人のイギリスの博物館員だった。

 大英博物館の館員、アーサー・ウェイリーが

いつも通り日本画の整理をしていると、一幅

の絵巻物が目に入った。「源氏物語絵巻」

だった。

 「美しい」とウェイリーは、ものの哀れを背景

にして浮かびあがる、美の世界に

魅せられていた。

 ウェイリーは少年の頃から古典に親しみ、

古代アイルランド語の碑文の読解に熱中

するなど、異なった言語に興味をもつ

ような子供だった。

 もとより彼は言語の才能に恵まれていた。

 一旦『源氏物語』を原文で読み始めたら、

紫式部の天才性に魅了され、夢中になっ

て惹きこまれてしまった。そして、

ウェイリーはその高い文学性に

大きな確信を持ったのである。

 〈これはまさに東洋最高の、そしてヨーロッパ

の小説と比較しても、世界名作10点の中に

その位置を占める長編小説だ〉

 『源氏物語』は世界屈指の名作だ、と確信し

自分がその翻訳者として運命づけられたと

予感し、この作品の翻訳を決意するのである。

 以後11年を費やす翻訳は、それはすさまじい

集中力で進められていった。

 心の中の式部が語りかけたように「自分が

続けるしかない」と思い直し、〈必ずや

世界十大傑作にかぞえられるに相違

ない作品を訳しているのだ〉と

いう信念を繰り返し自分に

いい聞かせて、精魂を

込めてペンを走らせていくのだった。

 1000年の夢を破り、世界に登場した

『ザ・テイル・オヴ・ゲンジ』。

 第一巻が出たのは、翌1925年。装丁は濃紺の

布表紙に金文字で『源氏物語』、背文字には

同じく金文字で『ザ・テイル・オヴ・ゲンジ』

というタイトルが入っている。日本古典文学

が世界に進出した歴史的快挙である。

 忽然と東方から登場した紫式部の文才は、欧米

の文壇で衝撃をもって迎え入れられ、各新聞・

雑誌上のおびただしい書評で激賞と喝采を浴びる。

 彼の文体は美しく、原文に新しい光を浴びせて、

一つの創作的な英文学作品につくり上げている

のも、読者を魅了する力になっているのである。

 ウェイリー訳は今も色あせることなく、英文学

の古典としての地位を占めている。まさに不朽

の名作といえるだろう。

 ウェイリーに発見されるまで、『源氏物語』

を知る人は欧米で皆無であった。

 1000年眠り続けたその目を覚まさせ、『源氏

物語』の真価を蘇らせ、世界第一級の文学と

して全世界に知らしめたのが、ウェイリー

という「王子さま」だったのである。

渡邊 毅 (著)『日本と世界の架け橋に

          なった30の秘話』

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  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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