本誌でお馴染みの村上和雄さんの、代表的
な研究の一つとなったヒト・レニン
の全遺伝子解読。
世界に先駆けて、その偉業を成し遂げた
過程には、たくさんのドラマがありました。
当時、ともに研究に挑んだ中西重忠さん
と、当時の状況を臨場感たっぷりに
お話しいただきました!
────────[今日の注目の人]───
◆ 新しい発見にはドラマがある ◆
中西 重忠
(サントリー生命科学財団生物有機科学研究所所長)
×
村上 和雄(筑波大学名誉教授)
───────────────────
【中西】
そして、こうしたことが形としてできて
きたところで、ちょうど村上先生と
お会いしたわけです。
【村上】
ドイツのハイデルベルクで。
【中西】
そうでしたね。僕らは同じ血圧関係の
学会に出ていたわけで、あの時が
初めてですよね。
【村上】
そう、初めて。お互いまだ40代でした。
【中西】
そうそう。でも先生はガックリして
いましたね(笑)。
【村上】
あの時はヒト・レニンの全遺伝子解読
に取り組んでいる最中でしたが、パリ
にあるパスツール研究所でも同じ
ことに挑戦していて、しかも
かなり先を行かれている
ことを知ったばかりでした。
とんでもない強敵が出現したというので、
僕は打ちひしがれていた(笑)。
(略)
【中西】
僕が驚いたのは、ドイツから帰ってきて
数日後には、共同研究のために誰々を
私の研究室に送るからって言って
こられたことですよ。
早かったですね。
それでこちらに来た三人の大学院生と
うちのグループの人間と組ませたら、
昼夜を問わずものすごくよく
働きましたよ。
【村上】
それは、やりがいがあったからでしょう。
私は学生たちをそんなにしごいて
ないですよ(笑)。
【中西】
本当にものすごく頑張ってくれたから、
結局3か月で完成してしまったん
ですよね。
【村上】
そう。感動的でした。
【中西】
たった3か月でしたけど、その間は
何回も電話をして、お互い興奮
しながら話しましたよね。
あれは面白かった。
我われは先生のお仕事を手伝っただけ
だと思っていましたけど、それでも
新しい発見が次々と出てきた時
の興奮というのはあるんですよね。
【村上】
エキサイトです。
【中西】
それがうちの研究室の連中にももの
すごくプラスになりました。
皆まだ若かったしね。
楽しみながら興奮して、でもそのため
にはものすごい努力もしました。
【村上】
私の研究人生における
一つのピークでした。
やはりいい研究ができると、力が出ると
いうか、勇気が湧いてくるんですよね。
※波長のぴったりあったお二人の対談は、
本誌で6ページにわたって
ご紹介しています。
ぜひご覧になってください!
『致知』2016年5月号
連載「生命のメッセージ」P108
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!