愛と信頼にもとづく模倣の積み重ね 第 149 号

 人気映画監督が描くエンタメ・ウラ事情! 

『バブルへGO!!』(2月東宝系全国公開)

の監督でもある著者が、エンタテインメント

の昭和史を独特の筆致で描ききった。

さあ、本書を読んで、昭和へGO!!

 この本は、日米の3人のプロデューサーに

まつわる、不思議な因縁の物語である。

 ひとりは、小谷正一。1912年、生まれ。

毎日新聞事業部長、野球のパリーグ

創設に深くかかわる。

 日本最初の民間ラジオ放送を起こす。

 電通では、ラジオテレビ局長をつとめた。

 大阪万博で、いくつかのパビリオン

のプロデュースを行う。

 二人目は、堀貞一郎。電通時代の小谷の

部下。ディズニーランドを浦安に

呼ぶ陰の立役者となる。

 3人目は、ウォルター・ディズニー。

 テーマパークビジネスの父となる。

 小谷の部下である山川は、こう証言する。

 「小谷さんの場合は、会議なんていう

ものではなくて、みんなに一人ずつ

勝手なことを言わせるんです。

 昨日こんな映画を見た、ここが面白

かったとか、そういうようなことをね。

 小谷さんはそれを聴いていて、それこれを

つなげるとひとつの傾向がでるなあ、

みたいなことを言うんです。

 世の中のまったく違う3つの現象を持って

来て串刺しにするとひとつのテーマが生

まれる、という方法論を、小谷

さんから教わりました」

 岡田氏の話。「小谷さんは、時間が

あれば映画を見ろというんです。

 それも、ただぼーっと見るんじゃなく

て、苦しんで見ろと」

 小谷は人の心を掴む天才だった。

 こうした小谷の心を掴む才能が、堀貞一郎

を筆頭に、彼の下で働いた多くの電通マン

に受け継がれ、今日の電通という会社

の営業技術の根幹を成していると

いったら考えすぎだろうか。

 「プロデューサーは黒子に徹すべし」を

信条とした小谷は、自分の業績が記録と

してのことを潔しとせず、また自ら

それを吹聴することもしなかった。

 小谷は、生涯唯一の著書の

最後を、こう結んでいる。

 「ディズニーランドは世界中のレジャー

施設が噛みしめていい示唆に満ちている。

 ディズニーの言ったことばで僕の好きな

セリフをもう一つだけ付け加えておこう。

 『われわれは、王様や王妃様を

楽しませたいと思う。

 しかし、ディズニーランドでは、

すべての客がVIPである』」

 「万博の次はディズニーランド」それが

小谷と堀の、無言の合言葉となった。

 小谷は、無類の話し上手で、ひとたび話し始

めると、あたりにオーラが漂ったともいう。

 小谷はすでに70歳を超えていたが、時には

若い矢幡と話し込むこともあった。

 そんなとき、好んでウォルト・

ディズニーの話をしていた。

 エンターテイメント製作に携わる

者は、過去の作品について、膨大

な知識と記憶を持っていない

と、仕事にならない。

 エンターテイメントは、先の時代を生きた

クリエイターたちとの愛と信頼にもとづく

模倣の積み重ねであることを、シェイク

スピア以降、誰よりも明確に示した

のは、ウォルト・ディズニーその人であった。

 小谷正一は、歴史の表舞台に

名前を出さない人生を歩んだ。

 だから、業績の割に、派手な

名声とは無縁であった。

 「クリエイターが表に出たら終わりや」

というのが小谷の口癖だった。

 「プロデューサーは黒子に徹すべし」

とも説き続けた。

 小谷の部下だった岡田は、小谷に

こうつっかかったことがある。

 「小谷さんがうらやましいですよ。今と

いう時代は、広告でもイベントでも

何でも形が完成してしまっていて、

行き詰っているでしょう。

 小谷さんみたいに、時代の過渡期に、

真っ白なキャンパスに思い通りに

絵が描けたら、ほんとうに

楽しそうじゃないですか」

 それに対して、小谷はまっすぐ岡田

の目を見て、こう答えた。

 「岡田くん。いつだって時代は過渡期

だし、キャンパスは真っ白なんだよ」

 馬場康夫

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  今回も最後までお読みくださり、

       ありがとうございました。感謝!

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