兄は何も知らない私に人間の見方と人生の幸福を教えてくれた 第 2,844 号

近代日本を代表する知識人、文芸評論家であり、
いまなおその著作や教えが
多くの人々に影響を与え続けている小林秀雄氏。

その妹であり、劇作家として活躍した
高見澤潤子さんが、小林秀雄氏から
教わったことを、『致知』で
話してくださったことがあります。

本日は22年前の『致知』に
掲載された貴重な記事をご紹介します。


………………………………………
兄・小林秀雄から学んだこと

高見澤潤子(劇作家)
………………………………………

兄は理論よりも行動を重視した。

何かせずにはいられないという気持ちは、
愛情とか尊敬からおこるものである。

頭で考えているだけでは、
そういう気持ちにはなかなかなれない。

愛情をもって対象物を本当に理解しなければ、
実行することはできない。

知ることは行うことだ、と兄は言っていたし、

「実行という行為には、
いつでも理論より豊かな何かが含まれている。
現実を重んじる人というよりは、
現実性を敬う心がある」

というようなことも言っていた。

私たちはあまりにも観念的になり、
抽象的になり理論的になっている。

理屈ばかり言って、実行しない者は多い。
現実を大切にしないからである。

実行するのは難しいことなのだが、
具体的にものを言うよりも、
抽象的に言った方が深みがあるように
思っているからである。

しかし目の前に現れている現実、
具体のほうが大事なのである。


私が自分の結婚問題について、
手紙で兄に相談した時、兄は長い返事をくれた。

その中にこういう言葉があった。

「人間が人間の真のよさだとか悪さだとか
分かる迄までには大変な苦労が要るものだ。

人間を眺める時、その人間の頭にある思想を
決して見てはならぬ。

それは思想だ。人間じゃない。

その中によさも悪さもあるものでない。

大体、アリストテレスの言ったように、
人生の目的は決してある独立した
観念の裡にはないものだ。

人間の幸不幸を定める生活様式の裡に
あるのである、いい生活様式を得れば
人間はそれでいい」


兄は何も知らない私に人間の見方と、
人生の幸福というものを教えてくれた。

人間は頭より情緒、心の優しさが大切で、
人間をみるというのは、実生活の
具体的なものを、しっかりみることである。


   『致知』2001年10月号より

致知出版社の人間力メルマガ

  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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