有るのは永遠に続く今!だけだ.今を生きよ!今を生き切れ! 第 2,299 号

ダボス会議メンバーや内閣官房参与などを
歴任し、私塾や著書を通じて多くの人々に
仕事や人生の示唆を与え続けている
多摩大学大学院名誉教授・田坂広志さん。

『致知』2021年12月号
特集「死中活あり」(しちゅうかつあり)では、
ご自身の原点となった体験を、
赤裸々に語っていただいています。

現在の精力的なご活躍ぶりからは
想像もつきませんが、
田坂さんは若い頃、重い病を患い、
医者から「もう長くは生きられない」
と宣告されたそうです。

そして、絶望に沈む我が子を
見かねたご両親の勧めで、
ある禅寺を訪ねます。

きっとそこには、病を快方に向かわせる
特別な治療法でもあるのではないか。
淡い期待を抱いていた田坂さんに、禅師は
思いも寄らない言葉を投げかけたのです。

  ◇  ◇  ◇

「どうなさった」

「はい、実は……」

私は堰を切ったように苦しい胸の内を吐き出し
ました。重い病気を患っていること、
医者からもう命は長くないと言われたこと、
一縷の望みを抱いてこの寺へやってきたこと……。
禅師はきっと、何か励ます言葉を
かけてくれるに違いない。
そう期待しながら語りました。

私の話を聞き終えて、
しばしの沈黙の後、禅師は言いました。

「そうか、もう命は長くないか」

「はい……」

その後、禅師は、
腹に響く声で力強く、こう言ったのです。

「だがな、一つだけ言っておく。
 人間、死ぬまで命はあるんだよ!」

一瞬、何を言われたのか理解できませんでした。
当たり前のことを言われた気がした。
しかし、禅師は続けてもう一つ、
力強く言葉を語ると、接見を終えました。

私は部屋を出て長い廊下を戻りながら、
禅師の言葉を思い起こしました。
その瞬間、突如、気づいたのです。

そうだ、禅師の言う通りだ! 
人間、死ぬまで命があるにも拘らず、
私は、もう死んでいた!

どうしてこんな病気になってしまったのかと
「過去を悔いる」ことに延々と時間を使い、
これからどうなるんだろうと
「未来を憂うる」ことに延々と時間を使い、
かけがえのない、いまを生きてはいなかった。

その瞬間、禅師が続けて語った言葉が、
心に甦ってきたのです。

「過去は無い。
 未来も無い。
 有るのは、
 永遠に続く、いまだけだ。
 いまを生きよ!
 いまを生き切れ!」

◇  ◇  ◇

現実に戻った田坂さんは……

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 今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝! 

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