宇宙自然の法則に則った生き方に従うことが自他を生かす 第 290 号

     郷に入りては郷に従う

 私達がこの世で生きてゆくには、なるべく苦痛の

ない快適な環境や状況の中で過ごすことを好み、

苦痛や不快感のあるところをなるべく避けたいとする

自己保存の本能があります。

 したがって、今まで人間は苦痛や不快感をなくし、

快適な環境や状況をつくるために努力してきた訳です

が、完全に解決したとは言えません。

 これからも、おそらくそうした理想郷を実現する

ことは、到底不可能だと思いますが、だからと言って

それに向かって努力する手を抜くことも出来ず、

シシフォスのように絶えず山路を登り続けなければ

ならないことでしょう。

 私達はすべからく、苦痛や不快感を解消すべく努力

しており、それを自分で解消するのが文化であり、

出来上がった科学技術や物で解消するのが文明で、

ともに不快感の解消に役立っていますが、いざその文明

の利器が得られなくなった時には、自分で解消する

より仕方がありません。

 また、新しい環境や状況に直面した時には、それを

自分の思う通りに改革することも必要ですが、もしそれが

実現不可能と分かったなら、自分をそれに適応させる

努力も大切です。

 そうでなければ、いつまでたっても両者間の葛藤は

やまず、物別れに終わって自他ともに傷つき、

嫌な思いをしなければなりません。

 日頃、私達は常に新しい社会環境や対人関係に立ち

向かい、それらを自分の思い通りに組み込むか、あるいは

それらに自分を組み込ませるか、の二者択一の選択や適応

を迫られ、弁証法的発展をし続けています。

 かって夏目漱石(1867-1916)は『草枕』の

冒頭で次のように述べています。

 「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。

 情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角この

 世は住みにくい。住みにくさが高じると安い所へ

 引っ越したくなる。どこへ越しても住みにくいと

 悟った時、詩が生まれて、書ができる」と。

 如何に、この世が嫌なところであっても、逃げ出すわけ

にもいかず、それを素直に受け止め、その中で精いっぱい

生きていくより仕方がありません。

 漱石がたどり着いた境地は”則天去私(そくてんきょし)„

という、自己中心的な生き方を離れて、宇宙自然の法則に

則(のっと)った生き方ですが、これは「如法(にょほう)に

生きる」という仏教で説く、宇宙の法則にかなった

生き方と一脈通じるところがあります。

 この章の句の「郷に入りては郷に従う」とは字句通りに、

ただ自分が住んでいるところの社会環境や状況に、自分が

素直に従う、という事ではなく、世界のすべてが、自分の

都合を超えた宇宙の法則によって、生成発展していること

が分かれば、それに従うことが自他を生かすことになる

わけです。

 そうした自他共通の公分母である、宇宙の法則が働く

世界を、”郷„すなわち「心の故郷」と呼び、いち早く

そうした世界のあることに目覚め、それに則って生きる

事をすすめているのです。

 おそらく、毎年訪れるお盆の行事の一環として、民族

の大移動があり、多くの人が郷里に帰るのも、ただ習慣

に従いレジャ-を楽しむだけではなさそうです。

 日本人として、私達の人生はちょうど根無し草の

ように放浪遍歴の旅をしているようなもので、命の源泉

である心の故郷に帰って今は亡き先祖のお墓参りをし、

旧知に会って日頃のご無沙汰を謝して初めて安堵の胸を

なでおろすのは、私達の心の中に故郷があって、そこに

戻りたいという無意識の衝動があるからではないで

しょうか。

 私達には、帰るところがあるから安心して

旅に出掛けられるのです。

 もし、私達にいつも仏様に抱かれているという、安心感

があれば、たとえ人生の旅路の途中でどんな目に会おう

とも、決してくじける事無く希望をもって歩んで行け

ましょう。

 その点、旅の目的もなく帰るところもない人にとって

は、人生はこの上もなく不安なことでしょう。

 私達が、どんな心がけで生きようと本人の勝手ですが、

要は安心して生きられるかどうか、が問題です。

         ( 仏教伝道協会 みちしるべより )

  今回も最後までお読みくださり、

         ありがとうございました。 感謝!

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