物の見方が全く変わっていきいきとした人生を生きる第1,225号

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 夏井 いつき(俳人)

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 俳句ブームの火付け役である俳人夏井

いつきさんに、俳句に秘められた力

についてお話しいただきました。

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 私たち俳句を詠む人間にとって吟行

(ぎんこう)は日常の一部です。

 

 仲間と一緒のピクニックなどはもちろん

ですが、例えばタクシーに乗っている

時もご飯をつくっている時も、そ

の心持ちさえあればすべてが吟行です。

 

 目や耳など五感から入ってくる情報で

アンテナに触れるものがあれば、す

ぐに掬い取って句帳にメモし、

その五感を頭の中で変換

し文字に変えていきます。

 

 昔のことですが、吟行をしながら頭の

中で言葉をこねくり回していてウン

ザリしたことがありました。

 

 その時、墓石の隙間に生えるスミレが

ふと目に止まり、瞬間、ハッとしました。

 

 自分の脳味噌から出てくる言葉は自分

以下のものでしかない、スミレや石、

風、空のほうが私の灰色の脳細胞

よりも、よっぽど新鮮な情報

を持っていることを教え

られたのです。

 

 五感を働かせることで、そんな体験

をすることも少なくありません。

 

 俳人の世界ではよく「生憎という

言葉はない」と言われます。

 

「きょうは生憎の雨で桜を

見ることができない」。

 

 これは一般人の感覚ですが、俳人たちは

「これで雨の桜の句を詠める」と考えます。

 

 雲に隠れて仲秋の名月が見えない時に

は「無月を楽しむ」、雨が降ったら

「雨月を楽しむ」と捉えます。

 

 これは日本人ならではの精神であり、

俳人の心根にあるものなの

かもしれません。

 

 その精神で俳句を続けていくと、個人的

な不幸や病気、悲しみ、憎しみなどマ

イナスの要素のものが、すべて句

材と思えるようになるのです。

 

 私たちの仲間でも、病気や家庭の事情

などを抱えながら頑張って生きて

いる人がたくさんいます。

 

 引きこもっていた人が俳句に出合って外

に出歩けるようになったとか、視覚に

障害を得て落ち込んでいた人が

元気になったとか、大切な

家族を亡くされた人が

俳句仲間に支えら

れて立ち直る

ことができたとか、そう

いう例は枚挙に遑がありません。

 

 それまで何をやってもマイナス思考で、

螺旋階段をグルグル回りながら果て

しなく下りていくように生きて

いた人が、物の見方が全く

変わっていきいきとした

人生を生きるようになる。これ

こそが俳句の力ではないでしょうか。

 

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今回も最後までお読みくださり、

     ありがとうございました。感謝!

 

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