人はなにかに、誰かに、必要とされることを必要とする  第 270 号

     心を開き誠を見(あら)わす

 「このせち辛い競争社会にあって、自分の心の内を

見せたら足元をすくわれ、実もフタもなくなってしまう」

と心のフタを閉める人を見かけますが、こういう人に

とっては、おそらくこの章の句のように

『本心を露わにして誠意をもって相手に接する』など

笑止千万(しょうしせんばん)なことでしょう。

 最初から相手を信用していないのですから、そんな

相手に自分の身も心も任せるわけがありません。

 はたして、この世はそんなに信用できない悪逆無道の

人ばかりでしょうか。

 人を信用できなくなる原因として、かっては信じて

いた特定の相手から裏切られたときに、不信感が芽生え、

これが度重なると裏切った相手ばかりでなく、それから

類推してすべての人が信じられない存在と映り、

自己防衛のために被害妄想を抱くようです。

 そうならないためにはどうしたらよいか。それには

まず自分を信じ、そして人を信じることです。

 すなわち、人間は時にはやむを得ず自他を裏切る存在

であると信じ、にもかかわらず信頼すべき存在であると

信じることによって、万一裏切られたとしても、根底から

不信感に打ちのめされることからまぬがれましょう。

 はじめから自分だけしか信じられなくて、相手を

信じなかったり、自分を無にして相手を信じた時には、

万一相手から裏切られた時には絶望的になります。

 外国人には、よく「日本の社会は孤立的であり、

閉鎖的で日本人は何を考えているのかわからない、得体が

知れない国民だ」と評する人がいます。

 日本人はとかく引っ込み思案で、ただニヤニヤ笑って

イエスを連発し、本心を見せずに裏に回って何かを画策し、

欧米諸国を出し抜く油断のならない国民だ、

という警戒感や不信感があるようです。

 したがって、貿易摩擦の是正というより文化摩擦の

問題です。

 これを是正するのは並大抵のことではありませんが、

お互いが、ただ「ノ-」と真っ向から対立して自己主張

するのではなく、本心を明かして誠意をもって、相互理解

を深める努力をしなければならないでしょう。

 本心や誠意を表すには、しぐさや態度も大切ですが、

それ以上に大切なことは、相手に信用される実績ある行為

で示すことではないでしょうか。

 いくら私達が「これが私の本心です」といったところで、

実際の行為がそれを裏切ったとしたら、面目丸つぶれで

あり、人は信用してくれません。

 実績ある行為というと、何か大それたことをするように

考えられがちですが、それは日常の些細なことにも

示されると思うのです。

 相手を本当に思いやる愛情があり、好きであれば、

いつか相手もその熱意にほだされて感応道交(かんのう

どうこう)して、こちらの気持ちを分かってくれる

と思うのです。

 ところが現代人にとっては、相手から愛されること

は好んでも、相手を好んで愛する人はいたって

少ないようです。

 これでは、いくら人心や教育の頽廃(たいはい)を

嘆いても、ひとつも実情は改善されません。

 かってアメリカの精神分析学者エリック・

エリクソン(1902-1994)博士は、

 「人はなにかに、誰かに、必要とされる

              ことを必要とする」

  と述べています。

 どんな人でも、愛されたいという気持ちを内心では

抱いていながら、それを素直に打ち明けたり表現する

ことをためらい、かなえられないと何とかしてもらい

たいと、いじけたりひねくれたりして、周囲に

訴えたりしているわけです。

 そうした気持ちを察しないで、高飛車に叱りつけたり

無視すれば、ますます心を閉ざし、反抗的になって

しまいます。

 寒い冬の最中に冷たい風が吹けば、誰しもコ-トの襟

を立てて身を引き締めますが、暖かい風が吹けば自然に

コ-トを脱ぐように、淋しさを分かち合う同事同情の

気持ちをもって、いっしょに苦しむことです。

 そうすることによって、相手もその熱意にほだされて

胸襟(きょうきん)を開き、心と心の結びつきが生まれ、

信頼されると思うのです。

         ( 仏教伝道協会 みちしるべより )

  今回も最後までお読みくださり、

         ありがとうございました。 感謝!

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