実業界で損得勘定をするのは当然であるが論語の精神を忘れてはいけない 第1,373号

 渋沢栄一がいた。“経済の平和は、民心の平和に

基を置かねばならぬ” この男こそ、近代日本

の国家システムの設計家(デザイナー)で

あり、ナショナル・リーダーであっ

た。通商の道を以て「致富経国」

を拓いた先達者の生涯を描ききる歴史巨編。

 大久保利通にくらべると井上馨は時勢を観察する

感覚がするどく、栄一の意見をよく理解し、し

かも天性磊落な気質でともに遊興を楽しむ

とき、上司の立場を忘れているようであった。

 栄一は日本実業界の重鎮となるにつれ、海外経済

事情を研究し、早急にととのえねばならない部

門の増強をはかるため、毎夜就床したのち

も考えをめぐらし、寝る暇もなかった。

 栄一は事業を経営するとき、かならず合本(株式

会社)主義をとった。彼がそれを推進しようと

したのは、士族の能力を社会において活用

しようと考えていたためであった。

 栄一の考えは、つぎのようなものである。「旧幕

時代からの町人は、利益を追求するばかりで、

視野が狭く、世界貿易を経営できる才幹

のある者は、めったにいない。だが

士族は知識、決断力がともに見

るべきものがあり、充分ヨー

ロッパ人と対抗しうる。

 士族が裕福な商人の番頭になることをいさぎよし

としない心情は、よく分かる。だが合本組織、

株式会社の社員となることは、実業界の

一員としての、公的な立場を得る

ことになり、士族を会社に導

入すれば、今後の経済発展

のために、貴重な人材になる」

 士族は旧幕時代は役人として、主君の資産を

預かってきた。明治期になって株式会社の

財産を管理する有能な社員になる資格

は、以前から備えていたのである。

 栄一は農家に生まれたが、のちに武士となり

一橋家に仕え、明治政府では大蔵省の高官

として敏腕をうたわれた。

 かれが合本組織をひろめ、没落にむかう士族

階級の才幹を活かして人材を輩出させ、商

工業者の地位と品格を向上させて、欧米

に比肩しうる商業道徳をわが国財界

に植えつける目的は、しだいに

達成されていった。

 栄一は私利をはかるよりも、国家経済の

隆盛を重大事と考える、財界の志士

というべき存在であった。

 栄一は実業界で事にあたるとき、損得勘定を

するのは当然であるが、論語の精神を忘れ

るようなふるまいをしてはいけないと、

常に語っていた。節義に反したこ

とをしてはならないというのである。

 栄一はフリーメイソンの人々が口にする言葉に、

つよく心を動かされた。フリーメイソンの

知識に行動が伴わねばならないという、

実践思想に感銘をうけたのである。

 津本陽『渋沢栄一、下巻:虹を見ていた』

  の詳細,amazon購入はこちら↓

   http://amzn.to/VprHnT

 今回も最後までお読みくださり、

       ありがとうございました。感謝!

スポンサードリンク

♥こちら噂の話題満載情報♥

ぜひ、いいね!を「ぽちっ」とお願いします

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください