本能的な欲望や衝動を突き動かす動物脳をコントロールする 第 154 号

 従来、脳外科手術は全身麻酔をして行われ

ていましたが、手術中の患者の反応が分か

らず、合併症や後遺症を引き起こす

こともありました。

 そんな中、局所麻酔で患者さんが目覚めた

まま手術を行う革命的な手術法「覚醒下

手術」を手掛けているのが都立駒込

病院外科部長の篠浦伸禎さんです。

 篠浦さんは覚醒下手術を手掛けていくうち

に患者さんを治すには、『論語』に代表

される人間学の教えが不可欠である

ことに気づいたのです――。

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    「脳のいい使い方を養う『論語』」

    篠浦伸禎(都立駒込病院外科部長)

□□■―――――――――――――――――――■□□

  対談のお相手は、世界に先駆けて「ヒト・レニン」

遺伝子の解読に成功したDNA解明の世界的な

権威・村上和雄さんです。

村上 覚醒下手術と『論語』がどう結び

  ついたのですか。

篠浦 覚醒下手術で患者さんの反応を確認

  しながら手術をするようになって

  一番驚いたのは、扁桃体(へんとうたい)

  です。

 扁桃体というのは側頭葉の中にあるんですが、

手術をしながら右の扁桃体に近づくと、患者

さんがものすごく攻撃的になるんです。

 普段おとなしい若い女性でも怒鳴り出す。

 逆に左に近づくと眠くなる。

 つまり逃避的になるんです。

 僕はそれを見て、どうも人間の精神という

のは、脳の一つの法則性に基づいている

んじゃないかと思ったんです。

 さらに最近分かってきたことは、脳の真ん中

に帯状回(たいじょうかい)というのが

あって、そこが扁桃体をコントロール

しているんです。

 突然キレたりパニックになったり、要するに

動物的な本能を司る大脳辺縁系(だいのう

へんえんけい)が暴走するのを防いで、

人間的な理性を司る大脳新皮質との

バランスを取るようにしている。

 どうも心というのはそこと深く関係

しているようなんです。

村上 あぁ、動物的な脳と人間的な脳の

  バランスを取っていると。

篠浦 ええ。扁桃体が深く関わっている動物的な

  脳は、食欲、性欲といった生存のために

  必要な基本的欲求を司っています

  からとても重要です。

 しかし、人間的な脳とうまくバランスを取ら

ないと、良識的な社会生活を営めません。

 そこを帯状回でしっかりコントロールする

ということは、要するに『論語』に代表

される人間学を学ぶことと深く関係

していると僕は考えたわけです。

村上 なるほど、脳のバランスを上手く取る

  ために『論語』を学ぶ必要があると。

篠浦 例えば『論語』の説く「仁・義・礼・

  智・信」を修めることは、本能的な

  欲望や衝動に突き動かす動物脳を

  コントロールすることに他なりません。

 「仁・義・礼・智・信」をしっかり修めれば

誰からも尊敬されますが、それは脳のいい使

い方を養えということでもあるわけです。

 ですから、『論語』を学ぶことは日本的な

生き方にすごくフィットすると思うんです。

村上 最近青少年の犯罪が増えているのは、

  脳の問題とも関係がありそうですね。

篠浦 あれは扁桃体の問題だと思います。

  異常を起こしてコントロールでき

  なくなっているんです。

 例えば、この間の川崎の事件で捕まった

少年も、カーッときて見境なくやった

わけでしょう。

 あれは扁桃体が活性化され過ぎて、脳全体

が巻き込まれたわけです。

 扁桃体というのはものすごい力があるので、

それに巻き込まれると脳全体がどうしよう

もなくなるんです。

 『論語』は、その扁桃体をコントロール

する学問と言えます。

 昔の人は『論語』を勉強したり、あるいは

武士だったら厳しい剣の修業を通じて、

動物的な脳をコントロールすること

を完璧にやっていたわけです。

村上 篠浦先生は、臨床で実際に『論語』を活用

  されることはあるんですか。

篠浦 精神疾患に苦しむ患者さんに『論語』や

  人間学の本を薦めたり、講演でお話し

  したりしています。

 『致知』 2015年7月号 

         連載「生命のメッセージ」P108~P113

         今回も最後までお読みくださり、

        ありがとうございました。 感謝!

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