公平無私で交渉に臨んでいるから相手の底意がよく見える 第 2,435 号

幕末、日本とロシアの間で締結された日露和親
条約。千島列島と樺太の領有を目論むロシア側
に対峙したのが、勘定奉行の
川路聖謨(かわじ・としあきら)でした。

川路が日本の外交史に残した功績、
そこに学ぶべきこととは? 

───────────────────

(PTA役員) 
では、これからの日本はどうしたらいいので
しょうか。参考にすべき世界の国との付き合い
方、あるいは交渉の仕方などが歴史に
残されていませんか。


(占部)
ありますよ。たとえば、皆さんよく
ご存じの日露和親条約があるでしょ。あれは日本
とロシアの国境を画定するための条約です。
そのための交渉に来航したのがプチャーチン
でしたね。


実は、この条約締結の交渉過程における双方の
発言の一言一句がすべて記録に残されています。

(PTA役員) 
そんな記録があるんですか。面白そうですね。

(占部)
これを読むと分かりますが、日露双方は千島
列島と樺太をめぐって息詰まる交渉を繰り
広げています。我が方の交渉チームの
代表は、幕府きっての国際通として
知られた勘定奉行の川路聖謨です。

まずプチャーチンは、「択捉は何れの所領
と心得られ候や」と切り出すのです。
これに対して
川路は43年前の故事を挙げて応じます。

「プチャーチン殿、かつて貴国の軍人ゴロウニン
が国後でわが国に捕らえられた事件は御存じで
あろう。その時、ゴロウニンはウルップと択捉の
のあいだを国境とする旨、証文で確約したでは
ないか。従って当然のこと、択捉はわが領土
である」


プチャーチンは狼狽して、
この件を保留するのが精一杯でした。

次いで議題は樺太問題に移ります。

川路は樺太の国境についてはきちんとした
実地調査を行って確定すべきであると主張。
これに対してプチャーチンは、
早期に目処が立たなければ
樺太に入植を開始するぞと恫喝するのです。

こうした態度に川路は負けてはいません。
こう切り返しました。

「貴殿の態度は何と傲岸か。もはやこれまで、
交渉は打ち切ろうではないか」

この川路の剣幕を目の当たりにしてプチャーチン
は、
「申立ての眼目は、
事を速に致度(いたした)くと存ずる事に候間、
御勘弁之有り度く候」

要するに、早期に妥結したい
気持ちから申し上げたに過ぎず、誤解を招いた
とすればお詫びすると陳謝したのです
脅しにはけっして屈しない
川路の面目躍如たる場面ですね。

しかしね、相手は老獪なプチャーチンです。
すぐさま話題を変えて、
外国船が燃料や食料を求めた際は無償ではなく、
有償で買い取らせて欲しいと申し出ます。

川路はその底意がどこにあるのか、見逃さ
なかった。こう答えました。いわく、

「瑣末(さまつ)の処へ力を入れ
論弁之有り候には及ぶ間敷(まじ)く、
我朝の人は、人の迷惑難儀を救ひ候て、
礼物値等受取り候儀は致さざる国風に候」

そんな些事にこだわりなさるな。
我が国では、人を助けたからといって
返礼など貰わない国柄である。
その点よく承知おき願いたい。そう回答した
のです。


たとえ緊急時の支援であっても、
金銭を受け取れば商取引と見做される。
そうした既成事実を作れば、
そこにつけ込まれて通商条約の口実を与え、
相手の思う壺となりかねないからです。

(教師C) 
よく見抜きましたね。

(占部)
川路の能力の高さもありますが、
一番は公平無私だからでしょう。
手柄を立ててやろうとか、
相手をへこましてやろうとかの邪念を払って
交渉に臨んでいるから、
相手の底意が見えるんですよ。


※本記事は月刊『致知』2018年1月号 連載
「日本の教育を取り戻す」より
一部を抜粋・編集したものです。

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  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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