ぼくのおかあさんになる準備をしてくれていたんだね = 2-2 = 第1,453号

授業の中で、梓が成長していくことに伴う
「親としての喜びと不安」には
どんなものがあるかを挙げてもらう
くだりがあります。

黒板を上下半分に分けて横線を引き、
上半分に喜びを、下半分に不安に思われる
ことを書き出していきます。

中学生になれば勉強が分からなくなって
困るのではないか。

やんちゃな子たちからいじめられる

のではないか……。

将来に対する不安が次々と挙げられる中、
こんなことを口にした子がいました。

「先生、真ん中の線はいらないんじゃない?」。

理由を尋ねると

 「だって勉強が分からなくても周りの人に

 教えてもらい、分かるようになればそれが

 喜びになる。意地悪をされても、その人の

 優しい面に触れれば喜びに変わるから」。

これまで二つの感情を分けて考えていたことは
果たしてよかったのだろうかと
自分自身の教育観を大きく揺さぶられた
出来事でした。

子供たちのほうでも授業を通して、
それぞれに何かを感じてくれているようです。

「もし将来僕に障がいのある子が生まれたら、
 きょうの授業を思い出してしっかり
育てていきます」

と言った子。

「町で障がいのある人に出会ったら
 自分にできることはないか考えてみたい」

と言う子。

「私の妹は実は障がい児学級に通っています。
 凄くわがままな妹で、喧嘩ばかりしていました。
 でもきょう家に帰ったら一緒に遊ぼうと
 思います」

と打ち明けてくれた子。

その日の晩、ご家族の方から学校へ
電話がありました。

「“お母さん、なんでこの子を産んだの?”
 と私はいつも責められてばかりでした。
 でもきょう、
 “梓ちゃんの授業を聞いて気持ちが変わったけん、
 ちょっとは優しくできるかもしれんよ”と、
 あの子が言ってくれたんです……」。

涙ながらに話してくださるお母さんの声を
聞きながら私も思わず胸がいっぱいに
なりました。

授業の最後に、私は決まって次の自作の
詩を朗読します。

「あなたの息子は

 あなたの娘は、

 あなたの子どもになりたくて生まれてきました。

 生意気な僕を

 叱ってくれるから

 無視した私を

 諭してくれるから

(略)

 おかあさん

 ぼくのおかあさんになる準備をしてくれていたんだね

 私のおかあさんになることがきまっていたんだね

 だから、ぼくは、私は、

 あなたの子どもになりたくて生まれてきました。」

上の娘から夫との馴初めを尋ねられ、
お互いに学生時代、障がい児施設で
ボランティアをしていたからと答えたところ

「あぁ、お母さんはずっと
 梓のお母さんになる準備をしていたんだね」

と言ってくれたことがきっかけで生まれた詩でした。

昨年より私は特別支援学級の担任となりましたが、
梓を育ててくる中で得た多くの学びが、
いままさにここで生かされているように思います。

「お母さん、準備をしていたんだね」

という娘の言葉が、より深く私の心に響いてきます。

『致知』2013年2月号 致知随想より

 今回も最後までお読みくださり、

       ありがとうございました。感謝!

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